【咀嚼】『燃えよ剣』司馬遼太郎

土方歳三はまるであなたみたいね」という言葉を尊敬する御方がもらったことがあるらしい。そのきっかけになったのがこの本だったようなので、そこから土方歳三に関心を持つようになった。

時は明治維新以前。外国が日本に入ってくるという時代に、それを排除しようとする機運が高まっていた。その時代、排除する側の先頭にいたのが幕府。今でいう内閣のようなものだ。将軍が総理大臣みたいなものだろうか。それで、幕府は外国を排斥しようとするのだけれど、弱々しい幕府では外国に負けてしまうからまずは幕府を倒す必要がある、と幕府を倒そうと動きだすような武士が増えてきた。そこで、幕府を守るための存在が新撰組という感じだ。新撰組の中でも、土方歳三の役割は将軍である。大将がいてその下につかえるナンバー2。

グッときた点は、思想とか議論を嫌うところ。それよりも、戦うという事こそ自分の役割としている点。大将である近藤勇は段々と政治の事に関心を持つようになって、弁もたつようになってくるが、そういう事に歳三は関心がない。関心のあった、自分にとって社会とは何か?という事にかかわってくる話だ。社会がどうのこうの、とか、政治がどうのこうの、とかやたらと論評したがる人間が本当に多い。でも、結局現場にたってやるようなやつはいない。政治家とかになってね。それ位だったら、自分が突き詰めたい事をやっている方が美しいと思う。何というかそういう美徳と通じる部分があったので。

どう死ぬか。生き残る事が大事なのではなくて、どう死ぬかが大事。五稜郭もやばい状態になって、降伏すれば生き残る事が出来るかもしれない、もう戦況としては勝てる見込みがない状況の中でも、降伏をしてしまったら死んだやつらにあわせる顔がないので、勝ち目がないたたかいだとわかっていても、自分が死ぬ事がわかっていても、たたかいを続けた。


燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社
1972-05


燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社
1972-06