【咀嚼】『うつしみ』園子温

女子高生がおでん屋の店主に一目ぼれしてしまう話。

身体をテーマにつくられているらしい。舞踏家と、服のデザイナーと、写真家が同時に出演している。身体というテーマがあたえられた時に、なぜあのような映像を撮ったのか。

彼女はセックスがしたくてしたくてたまらない。店主にストレートにセックスしたい、と懇願する。はじめは受け入れてもらえなかったが、次第に店主もその気になってきて、結局セックスをする。でも、セックスをした後は彼女はどっかに消えてしまう。店主はセックスしてからその子の事が気になり始めてしまう。

しばらくたってから彼女を見つけて付き合ってほしい、というが、彼女は好きな人がいる、という事を言われる。彼女は付き合うとかそういうのはではなくて、セックスがしたかっただけだった。

自分自身がずっと関係性の事で疑問に思っていた事が映像になっているようだった。
付き合うとか付き合わないとか、そのような規範を前提にしてしまう関係ではなくて、もっと一瞬一瞬の関係はないものだろうか、という疑問。彼女に対して前に好きだといっただろ?とか、セックスしたじゃないか?とかそういう事は通用しない。彼女は今好きな人がいる。それに対していくら理論武装しようとも通用しない。

やっとその事に彼は気づいて如何に彼女を説き伏せるかを考えるよりも、自分も彼女位のペースで走れるようにならなければいけないと思い、トレーニングを始める。
それこそ、良い関係だなと。彼女が振り向いてくれない時に、自分たちが付き合っているんだからと正論をかざして相手を縛りつけるよりも、自分を痛めつけてトレーニングして、相手よりも走れるように努力する、相手がついてきてくれるかどうかはその結果でしかない、という関係性。

さらにオチがあって。結婚する事になって結婚式をあげようとなった時に、タクシーに乗り込んでしまう。あれ程、走る事に重きを置いていたのに、あっさりタクシーに乗り込んでしまった事に愕然として彼は走ろうとする。それで、彼女も仕方ないなとなって彼女も一緒になって走りだす。