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【咀嚼】『花とアリス』岩井俊二

記憶というのは自分というものを認識する上でより自分というものを確かにさせたりする一方、
逆に自分というものからは逃げる事は出来なくさせてしまう。

花にとっての記憶。先輩に恋をしてしまった自分。
でも、そんな恋をしてしまった自分を否定するように
先輩を記憶喪失だとして先輩が自分の事を好きだったとしてしまう。
先輩が現在において自分の事を好きかどうかよりも先輩が過去に自分の事を好きだったという方が
彼女にとっては大事だったのかもしれない。

アリスにとっての記憶。
父の事が好きだけれどもいざ会っている時は面と向かって素直に伝える事が出来ない。
先輩と会う時間の中で父と先輩を重ねていく。
演劇をやっている時のアリスや先輩との元彼女を演じている時のアリスは下手くそだけれども、
父と先輩を重ねて、自身も過去のアリスを演じている時のアリスはとても自然にふるまう。

先輩にとっての記憶。
花によって、記憶喪失をする前は花の事が好きだったと言われるけども、
現在の自分はアリスの事が気になって仕方がない。
過去の自分、記憶としてあったと言われ、周りから認識される自分。
現在の自分、記憶にはないけど、自分の気持ちには気付いている自分・
いったいどっちの自分が本当なのだろう。

それぞれがそれぞれの過去というのを乗り越える瞬間は美しい。
決してスマートというか、鮮やかではないけれど。
花が、先輩に自分は嘘をついていたと伝えるシーン。
先輩が、アリスと花に今の自分の気持ちを伝えるシーン。